続・風のとおり道

自己探求と不思議なこと、ヘミシンクの記録です。

働き星・なまけ星~~{ こと座・わし座・オリオン座 }

 

野尻抱影氏の著作から。

 

北海道に住んでいるアイヌ人たちは、いろいろ面白い星の伝説を伝えています。

その中に、星の明るさを働き者と、なまけ者とに結び付けた伝説が、いくつか残されています。

 

不思議な老婆

むかしむかし、貧しい母親が、二人の若い息子と、大きな川のほとりに住んでいました。兄はひどい怠け者で、毎日遊んでばかりいましたが、弟はせっせと働いて、家の暮らしを助けていました。

 

しかし、弟が稼いだ金を、兄はそばから使ってしまうので、暮らしは少しも楽になりません。それを心配した母は病気になって、ある冬の晩、とうとうあの世に旅立ちました。

 

孝行者の弟は嘆き悲しみました。兄もすっかり後悔して、弟と一緒に夜も昼も

「もう一度、お母さんを戻してください」

と天の神様に祈りました。

 

すると、ある日のこと、見なれない おばあさんが、兄弟の所へやって来ました。乞食のような、みすぼらしい姿のおばあさんですが、目が不思議に光っていました。

 

これは、ただ者ではないと思って、二人は親切にもてなしました。すると、おばあさんも、すっかり満足して、

「お前たちは、亡くなったお母さんに会いたいのだね。それなら私を船に乗せて川向こうまで渡しておくれ。そしたら、お母さんに会わせてあげよう」

と言いました。

 

兄弟は大喜びで、早速おばあさんを船に乗せて、向こう岸へ漕いで行きました。

ところが、いくら漕いでも船は向こう岸に着きません。岸の方が後ずさりするのです。

もともと怠け者の兄はかんしゃくを起こして、

「バカバカしい、おばあさんの約束なんか当てになるもんか。」

と櫂を放り出してして船の中に、ごろりと寝転んでしまいました。

 けれども弟の方は、母に会いたい一心でなおも一生懸命に船を漕いでいきました。

この様子をじっと見ていたおばあさんは急に立ち上がって、

「さあ、お前、おいで!」

と言って弟を抱くと光り輝く女神の姿になって、船を離れすーっと空へ昇って行きました。びっくりした兄は、飛び起きて

「私も連れていって」

と叫びました。けれども、もう遅かったのです。船と一緒にぐんぐん流されて、とうとう地獄に落ちてしまいました。

 

天の神は、このことをアイヌ人の戒めとするために、そのときの3人の姿を星に現しました。

これが、彦星とそれを挟む二つの星です。

 

彦星は1等星で、これは神様のおばあさん。名前も 「ウルナベクサ・ノチウ」 と言います。(川を渡すおばあさんの星という意味)と言います。

そして、左の暗い4等星は怠け者の兄で、右の明るい3等星が 働き者の弟だと言われています。

 

星の追いかけっこ

次にアイヌ人たちは、オリオン座の三ツ星のことを、イウタニ(米をつく杵)と言い、スバルを、アルワン・ノチウ(怠け星)と言っています。

 

むかし、ある所に6人の女兄弟がいました。元は金持ちでしたが、父は熊に殺され、母はそれを悲しんで家出をしてしまいました。

 

後に残った娘たちは、すっかり怠け者になってしまいました。そして春や夏は山の中で遊んで暮らし、秋になると村に戻って、食べ物をもらっては、ごろごろ寝てばかりいました。

 

この娘たちの家の近くに、3人の若者がいました。そろって働き者で、昼は仕事に出かけるし。夜は杵でコットンコットン米をついていました。

あるとき3人は娘たちのところへ行って、

「どうだね、少し働いてみては。元はせっせと機(はた)を織っていたではないか。そんなに遊んでばかりいると体に良くないよ。」

と忠告しました。

 

ところが6人の娘は、口をとがらせて、

「いらぬお世話だよ。働かなくっても食べるのには困らないわ。働くなんて気のきかない者のすることさ。」

と憎まれ口をたたきました。そこで3人の若者は腹をたてて、6人の娘たちを捕まえようとしました。

 

娘たちも、これにはビックリして一散に逃げました。けれども逃げながらも、なお減らず口をきくので、若者たちは、どこまでも追いかけました。

 

とうとう川のへりに出ました。娘たちは舟に飛び乗り、空へ逃げ上がりました。

若者たちも舟を漕いで、まずは追いかけましたが、、12本の手で漕ぐのには、とても追いつくことが出来ず、あきらめようとしました。

 

この様子を見ていた天の神は、いきなり、娘たちの舟の前に手を広げて、

「この怠け者どもの舟、動くな! お前たちは心がけの良くない娘たちじゃ。世の戒めのために、そこにいつまでも、そこに固まっておれ。」

 

天の神が言い終わらないうちに、娘たちはみるみる小さい星になって、ひところに固まりました。アルワン・ノチウ(怠け星)がこれです。

 

それから、天の神は3人の若者に向かって、

「お前たちは、よく働いて感心なものじゃ。そこで世の人たちの手本になるよう、3つの星にしてあげよう。」

と言いました。

 

3人は、3つの美しい星になりました。これが イウタニ(三ツ星)で、星となってもアルワン・ノチウを追い回しています。

これは、スバルとオリオンとが続いて昇ることから生まれた話です。